セレンゲティ・人と動物プロジェクト
2010年度活動報告(2010年6月−2011年5月)

プロジェクト責任者: 岩井雪乃

1.目的

このプロジェクトは、タンザニアのセレンゲティ国立公園の周辺で、人と動物が共存できる社会づくりを目指して、奨学金支給による人材育成をしています。

国立公園の周辺では、自然を保護することによるネガティブな影響が発生します。保護区から出てきたアフリカゾウが、畑を荒らしたり人を襲ったりします。政府や外国資本の企業によって、住民の土地が保護区に奪われてしまうことも起こります。

 

セレプロでは、このような自然保護に関わる問題を、住民自身が解決できるようになることが重要だと考えています。自衛策を開発したり政府に働きかけたりすることが必要になりますが、それを外部の人間ではなく、住民自身ができるようにならなくては、ほんとうの「人と動物の共存」はありません。村の未来を自分たちで切りひらく!そんな人材を育てることを目指しています。

2.2010年度給付実績

  奨学生氏名 性別 年齢 就学先 給付金額(円) 備考(昨年度からの関係)
1 モテンバ・チャンガ 27 財政管理大学 0 雨基金、卒業
2 マティンデ・ジュマ 19 コリラ中学校 53,400
3 ウィルソン・ムゴシ 18 コリラ中学校 71,200 雨基金
  合計       124,600  

*マティンデさんへの支援にはYahoo募金の収入32,500円を使わせていただいています。

3.奨学生の状況

(1)モテンバ・チャンガ Motemba Changa (男)27歳 財政管理大学3年生

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モテンバはおばあちゃんが大好き

2010年7月に、AとBばかりという優秀な成績で大学を卒業しました。現在は就職活動中です。しかし、日本のような「就職活動」が、タンザニアに存在するわけがありません。求人の情報源は、新聞かクチコミです。セレプロの先輩卒業生たちは、次々公務員になっているので、やはり公務員を志望しているモテンバ。地道に新聞で求人を見つけては、応募をくり返しています。地元セレンゲティに近い場所での求人を探してはいますが、なかなかないのが現実です。いい職にめぐり合えるまでがんばれ!


(2)マティンデ・ジュマMatinde Juma(女)19歳 キコラ中学校5年生
ウィルソン・ムゴシWilson Mgosi(男)18歳 ロンベタ中学校4年生

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ウィルソンのお母さん(右)から支援者の原田さんと寺嶋さんへのプレゼント

2人は、2010年7月からコリラ中学校へ転校しました。コリラ中学校は、カトリック系の団体が運営する歴史の長い学校です。中学校と高校が併設されていて、教員の数が多く、きちんと授業をしてくれます。

二人は、10月にある高校進学のための全国統一試験に向けて、猛勉強中です。この試験の成績によって、高校に進学できるかどうか、どのレベルの高校にいけるかが決まります。本来なら1ヶ月ある夏休み(6月)も返上して、学校で補講を受けています。

(3)セレプロ卒業生マベンガさん、ワンブラさんに赤ちゃん誕生

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マベンガと息子。生まれた当初は病気ばかりだったが、丈夫になってきた。

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ワンブラと両親

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ワンブラの奥さんと赤ちゃんと岩井

マベンガは2005年に、ワンブラは2009年にセレプロを卒業しました。それぞれ、入管管理局、首都水道公社で公務員として働いています。二人とも現在は結婚して、子どももいます。マベンガの子どもは2歳、ワンブラの子どもは1歳です。二人の結婚式は、それぞれに何百人もの列席者があって、それは盛大でした。この二人はモテンバをはじめとして、多くの村の若者のサクセスモデルとして憧れになっています。

4.来年度の展望

これまで支援してきた奨学生たちは、村から大学に進学したパイオニアたちです。彼らが、高学歴を納めて公務員等の安定して権力のあるポジションに着いている姿は、多くの村人に新しい成功モデルを提示することになりました。これは、村人の教育意欲の向上に大いに貢献しています。タンザニアの中等教育の強化政策もあり、現在では、村の小学校卒業者の80%が中学校に進学しています。大学進学者も次々と輩出されるようになっています(ちなみに、10年前は中学校進学率は10%でした)。

しかし、高等教育を受けた者は、残念ながらほとんど村に帰ってきません。セレプロ卒業生たちも、村に帰ってきたい想いはやまやまですが、職がないのです。大学まで出たのに、農業に戻ることはできません。これは、日本でも起こってきた現象です。この結果は、残念ながらセレプロの求めている人材育成とは異なる方向です。

村に残っている若者を支援するにはどうしたらいいか。目下のセレプロの課題です。支援している村のひとつでは、村長は30歳の若手で、彼を支えているのも同世代の若者たちです。村でがんばる彼らをどのように支援できるのか。教育費のように、わかりやすい支援にはならないでしょう。現地駐在員がおらず、担当者の現地滞在も限られた時間の中で、どのように実現できるか? 模索を続けていきたいと思います。

更新日: 2011-02-08, 作成者: AFRIC Africa