セレンゲティ・人と動物プロジェクト
2006年度活動報告(2006年6月−2007年5月)

プロジェクト責任者: 岩井雪乃

1.目的

このプロジェクトは、タンザニアのセレンゲティ国立公園の周辺で、人と動物が共存できる社会づくりを目指して、奨学金支給による人材育成をしています。

国立公園の周辺では、自然を保護することによるネガティブな影響が発生します。保護区から出てきた動物が、畑を荒らしたり人を襲ったりします。あるいは、政府や外国資本の企業によって、住民の土地が保護区に奪われてしまうことも起こります。

 

セレプロでは、このような自然保護に関わる問題を、住民自身が解決できるようになることが重要だと考えています。自衛策を開発したり政府に働きかけたりすることが必要になりますが、それを外部の人間ではなく、住民自身ができるようにならなくては、ほんとうの「人と動物の共存」はありません。村の未来を自分たちで切りひらく!そんな人材を育てることを目指しています。

2.2006年度給付実績

今年度は、4名に奨学金を給付しました。2名は昨年度からの継続で2名は新規です。

  奨学生氏名 性別 年齢 就学先 給付金額(円) 備考(昨年度からの関係)
1 ニャマリワ・ジョン 19 イコマ中学校 24,000 継続
2 モテンバ・チャンガ 23 セント・パトリック高校 30,000 雨基金継続
・2月卒業
につき終了
3 ワンブラ・マシンデ 24 タンザニア・ビジネス大学 84,000 新規
4 マティンデ・ジュマ 15 イコマ中学校 24,000 雨基金新規
  合計       162,000  

3.「セレンゲティの雨基金」新規組み合わせ

マティンデ・ジュマ(女)15歳 イコマ中学校1年生

 

「セレンゲティの雨基金」は、一人の支援者が一人の奨学生を支援する仕組みです。今年度は、峰岸さんとマティンデさんの組み合わせで支援がスタートしました。

支援者:峰岸由香さん(会社員)
2005年に岩井(セレプロ担当)が早稲田大学で実施している学生プロジェクト「エコミュニティ・タンザニア」でロバンダ村を訪問。そこで一緒に遊んだ子供たちのことが忘れられず、「ぜひ村の女の子を支援したい」と申し出てくれました。

受給者:マティンデ・ジュマ(女)15歳 イコマ中学校1年生
マティンデの母はシングルマザーで、彼女は6人兄弟の末っ子です。2人の兄と姉の1人は村で農業をしています。もう1人の姉は洋裁師です。すぐ上の姉は別の中学校の3年生で学んでいます。現金収入が乏しいながらも、上の姉は、家族が協力し合って中学校に行っています。しかし、中学生が2人になると負担が大きいため、峰岸さんに支援していただくことになりました。マティンデは、小学校の卒業試験で、イコマ郡の女子の中で1番の成績を取りました。手紙もきれいな英語で書ける、たいへん優秀な子です。

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マティンデ(左)と親戚の子供たち

4.奨学生の状況

(1)モテンバ・チャンガ Motemba Changa (男)23歳 セント・パトリック高校2年生

モテンバは、雨基金によって、2005年4月から石川県在住の松田さんの支援をうけて高校に通っていました。今年3月に卒業試験を終えて、無事に高校を卒業しました!よりよい教育環境を求めて途中で転校もありましたが、おかげで勉強に専念することができた2年間でした。

タンザニアの仕組みでは、高校の卒業試験は大学入学のための共通試験となっています。モテンバの成績は、グレード3でした(グレードは1−4まであり、1が一番よい成績)。グレード3は、教員養成大学などの大学に進学することができるので、現在、いくつかの大学に入学申請をしています。さらなる進学が彼の希望です。

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モテンバ(前列左から2人目)と寮の仲間たち

(2)ワンブラ・マシンデ Wambura Masinde(男)24歳 タンザニア・ビジネス大学1年生

新規の支援者です。ワンブラは、9人きょうだいの7番目として生まれました。彼の父は、すでに74歳と高齢で、農耕や牧畜ができる体力はありません。長女の姉は足に障害があり、歩くことができません。その次の兄は、タンザニア第一の都市・ダルエスサラームに行ったきり、今は何をしているかわかりません。もう一人の姉と兄は、それぞれに結婚して自分たちの家庭を築いています。両親やワンブラを含めた未婚のきょうだいを支えているのは、2番目の兄であるゲチュリです。

ゲチュリは、セレンゲティ国立公園のレンジャーとして働いているので、安定した給料をもらっています。ゲチュリが就職する以前、学費が支払えずにワンブラは泣く泣く中学校を中退したことがあります。運良く、兄の就職によって、再び学校で学べるようになりました。それ以降は以前にもまして必死に勉強し、マラ高校に優秀な成績で入学しました。そして、今年2006年2月に、大学に進学できる成績で卒業しました。

しかし、2006年1月、ゲチュリが仕事中に交通事故にあい、3ヶ月入院の重症を負ってしまいました。その後も脳に後遺症が残って以前のようには働けなくなり、一家の収入は半減してしまいました。兄ゲチュリは、ワンブラの学費はもちろん、中学4年生の妹や、中学1年生の未婚の姉の息子の学費も負担しています。中でも年間17万円かかるワンブラの学費は大きな負担です。そこで、アフリックでは、ワンブラの学費の半額を支援することにしました。

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マベンガと共に日本人学生ボランティアの活動をサポートしている(5を参照)

(3)ニャマリワ・ジョン Nyamariwa John(女)19歳 イコマ中学校4年生

昨年、寄宿制の中学校に転向したニャマリワでしたが、今年になって、再び以前の通学制の学校に戻ることになってしまいました。学校が規模を縮小することになり、学生数を減らしてしまったのです。勉強する環境としては寮制の学校のほうがいいのですが、逆境に負けずに勉強に励んでほしいものです。11月には中学校の卒業試験があります。

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ニャマリワ(左)と一番上の姉ワクル。
ワクルの第4子の赤ちゃんは、私の母の名をとってフミコと名づけられた

5.セレプロ奨学生の活躍

2005年卒 マベンガ・ソスピーター

第1期からの奨学生であるマベンガ君は、昨年、大学を卒業しました。そして、自分でNGO・ SEDERECを立ち上げ、環境保全と村落開発の活動をしています。アフリックの支援対象から、よきパートナーへ成長しています。私は、早稲田大学平山郁夫記念ボランティアセンター(WAVOC)客員講師としての仕事のほうで、マベンガ君との協働プロジェクト「エコミュニティ・タンザニア」(エコタン)を実施しています。夏休みと春休みに日本人学生10人が村を訪れて、ボランティア活動や交流活動を実施します。その現地滞在の手配は、すべてマベンガが担ってくれています。

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日本人学生と活動するマベンガ

6.今後の展望

また新しい雨基金の組み合わせが生まれて、たいへん喜ばしいです。支援してくださっている方は、いずれも現地訪問の経験があります。モテンバの支援者の松田さんは、8月にはタンザニアを再訪します。その時には、モテンバ君と初めての対面が実現する予定です。こんなふうに、アフリカの村人たちと日本人の交流と絆を深めてる仕組みとして、セレプロを発展させていきたいです。

更新日: 2007-08-02, 作成者: AFRIC Africa