セレンゲティ・人と動物プロジェクト
2005年度活動報告(2005年6月−2006年5月)

プロジェクト責任者: 岩井雪乃

奨学生二人が卒業しました!マベンガ君はNGOを立ち上げ、地域のための活動を始めています!クレトス君は小学校の先生として奮闘しています!

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マベンガとセレプロ担当の岩井

1.目的

このプロジェクトは、タンザニアのセレンゲティ国立公園の周辺で、人と動物が共存できる社会づくりを目指して、奨学金支給による人材育成をしています。

日本でも、サルやクマが人里にあらわれると騒動になるように、セレンゲティ国立公園の周辺では、頻繁に動物が出没して地域住民との間に問題を生じさせます。例えば、公園の西部地域では、5年ほど前からゾウが村に出てきて畑を荒らすようになり、被害が拡大しています。昨年は、畑の見張りをしていた村人がゾウに殺される事件もありました。村人はゾウに対抗できる銃や車といった装備がないので、追い払うことができません。タンザニア政府は、観光資源として貴重なゾウを保護することを優先させるため、有効な対策をとろうとしません。政府にとっては、住民よりもゾウが大切なのです。

セレプロでは、このような野生動物との問題を、住民自身が解決できるようになることが重要だと考えています。自衛策を開発したり政府に働きかけたりすることが必要になりますが、それを外部の人間ではなく、住民自身ができるようにならなくては、ほんとうの共存はありません。村の未来を自分たちで切りひらく!そんな人材を育てることを目指しています。

2.「セレンゲティの雨基金」〜セレンゲティに恵みの雨を降らせましょう〜新設!

2004年12月から、寄付者と奨学生をより直接的に結びつけるプログラムを開始しました。アフリカをより身近に感じてもらうためには、人と人が直接的に交流することが一番です。その手段として、「雨基金」では、1人の寄付者と1人の奨学生を1対1でつなげます。どうぞ、ご協力ください。(詳細は「セレンゲティの雨基金」をご覧下さい)

3.2005年度奨学金支給実績

今年度は、昨年度から支援している3人を引き続き支援するとともに、上述の「雨基金」によってさらに1人奨学生が増えました。これまで支援してきた奨学生2人が、それぞれ総合大学と教員養成大学を卒業しました。

表 2005年度奨学金支給実績
  奨学生氏名 性別 年齢 就学先 給付金額(円) 備考
1 ニャマリワ・ジョン 18 イコマ中学校 23,050  
2 マベンガ・ソスピーター 27 ダルエスサラーム大学 80,675 卒業
3 クレトス・ニャギタ 31 タリメ教員養成大学 34,575 卒業
4 モテンバ・チャンガ 22 セント・パトリック高校 46,100 雨基金
  合計       184,400  

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雨基金奨学生のモテンバ・チャンガ君

4.奨学生の状況

(1)ニャマリワ・ジョン Nyamariwa John(女)18歳 イコマ中学校3年生

ニャマリワは昨年度、叔父さんの死がショックで進級試験に合格できず、2年生留年という困った事態になりましたが、今年は無事に試験にとおりました。勉強に集中できるように、寄宿生の学校に転校したのが良かったようです。以前の学校は寮がなかったため、学校の近くに暮らす母の友人の家に下宿していました。しかし、そこでは帰宅後に家事を手伝わなければならず、一緒に勉強する仲間もいないので、十分な自習ができなかったのです。

タンザニアの学校の先生は、それほど熱心には教えません。あとは、いかに自分で勉強するかが、成績を伸ばすポイントになってきます。実家のロバンダ村はますます遠くなってしまったので、年に2回しか帰ることはできませんが、勉強に集中できる環境でがんばっています。

(2)マベンガ・ソスピーター Mabenga Sospeter(男)27歳 ダルエスサラーム大学 地理・環境学科 3年生

マベンガは、大学を卒業しました!地理・環境学科は3年制なのです。6月に卒業試験を終え、先日(7月下旬)結果がでました。Aが3科目、Bが3科目、Cが1科目と、優秀な成績でした。11月に卒業式を終えて正式な卒業証書をもらったら、本格的な就職活動が始まります。彼がどんな職についてくれるか楽しみです。

また、マベンガは、同じイコマ出身の大学生を集めてNGOを立ち上げました!SEDEREC (Serengeti Development Research and Environmental Conservation Center)といいます。立派なHPも作っています。セレプロの目指す「住民の主体的な活動」を、在学中から早くも始めてくれたことは、とてもうれしいことです。奨学金を支給してきた甲斐がありました。

昨年の8月は、私が働く早稲田大学平山郁夫記念ボランティアセンターの大学生とともに、ゾウ被害実態調査を実施しました。日本人10名の受け入れに奔走してくれて、とても頼もしいカウンターパートに成長しています。アフリックの事業パートナーとしても期待できるので、今後の展開をご期待ください!

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「日本人ボランティアを率いるマベンガ(中央左)

(3)クレトス・ニャギタ Cletus Nyagita(男)31歳 タリメ教員養成大学3年生

クレトスは、2005年12月に教員養成大学を卒業しました。現在は、小学校の先生として働いています。2001年から、タンザニアでは小中学校の増強に力を入れていて、新しい学校がどんどん増えています。教員の需要も増えている時期なので、就職するにはよいタイミングでした。

まずは、彼が自立してくれて、ほっとしています。これで、彼が養わなければならない家族(妻、3人の子供、祖母)も安心です。クレトスは、さらに進学したいという希望も持っていますが、それは自分でお金をためてからになるので、一旦支援は終了します。

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クレトスが養う家族

(4)モテンバ・チャンガ Motemba Changa (男)22歳 セント・パトリック高校1年生

モテンバは、「セレンゲティの雨基金」によって、松田さんという方から支援を受けています。モテンバの母親はシングルマザーです。彼は6人きょうだいの3番目で、上に姉と兄、下には妹3人がいます。祖母も同居しています。母親は農民で、現金収入源はほとんどありません。祖母が所有する牛の乳を売ることでわずかな収入を得ています。姉は、町で洋裁をしながら生活していますが、実家を支援する余裕はなく、自分の子供を母親にあずけっぱなしで帰ってこないほどです。兄は小学校を卒業しただけで、実家の農業と叔父の家畜の世話を手伝っています。兄には現金収入はありません。

このようなめぐまれない家庭環境でしたが、モテンバは必死で勉強し、中学校(4年制)に進学できる成績をとりました。母は学費を出すことはできなかったのですが、叔父が中学校の学費は支援してくれました。中学校に行っているモテンバの妹の学費も叔父が捻出してくれました。そして、2004年11月に卒業試験があり、2005年3月に結果が出て、彼は高校に進学する資格を得ました。しかし、叔父が卒業と同時に亡くなってしまったため、学費を出してくれる人がいなくなってしまいました。そのため、5月から始まる高校に行くことができなかったのです。そんな時に、「雨基金」の話を聞いた松田さんから支援の申し出があり、高校に行けることになりました。

当初、ムベアというタンザニア南端の町の高校に通っていましたが、学習環境が悪いため、首座都市ダルエスサラームの高校に転校しました。前の高校は、僻地にあるため生活が不便で、先生たちが用事をつくってはしばしば町に行ってしまって授業をしないのでした。また、電気がないので、夜の自習もできませんでした。今の高校はミッション系の高校で、先生たちも熱心に教えてくれるので、モテンバも刺激を受けて勉強に打ち込んでいます。

5.今後の展望

今年度は奨学生が卒業し、教員として就職したり、NGOを立ち上げてコミュニティのために活動を始めたりと、セレプロの成果が目に見えるようになってきました。10年来つきあってきた彼らが、自分の足で立ち、道を切りひらいている姿を見ると感慨深いです。出会った頃は、あどけない少年だったんですよ。そして、それもただ自立するだけではなく、セレプロの期待どおり、コミュニティに貢献し、変革を起こす人材に成長してくれているのですから、喜びも一層大きいです。

 彼らの目は、今でも出会った頃と変わらずにキラキラと輝いています。今後は、セレプロの「支援対象」ではなく、よき「パートナー」として一緒に活動していきたいと思います。ますますのご支援をよろしくお願いします。

更新日: 2006-08-27, 作成者: AFRIC Africa