アフリカ便り—お正月編

お正月はマメに働こう (タンザニア)

近藤史

クリスマスからお正月にかけて、日本や欧米ではのんびりと過ごすことが多いですね。キリスト教徒がたくさんいるタンザニアでも、学校やオフィスにはクリスマス休暇があります。けれどもこの時期、タンザニア南部・ンジョンベ県の農村に住むベナの人びとは大忙し。ちょうどインゲンマメの収穫期にあたるので、学校が休みになった子どもたちも手伝いに集まって、畑は普段よりも多くの人で賑わいます。

 

インゲンマメはタンザニアの食生活に欠かせない作物で、市場や商店には様々な品種が売られています。インゲンマメを塩味で煮込んだ料理は、タンザニアの食卓にのぼる最も一般的なおかずです。ベナの人びともこれを好んで食べるので、インゲンマメをたくさん栽培しています。そして自給用のマメを得るだけでなく、余った分は商人に売って貴重な現金収入を得ています。

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ある日の食卓。右上:ウガリと呼ばれる、トウモロコシの粉を熱湯で練った団子。
左上:インゲンマメを煮込んだおかず。下:アブラナ科の植物の葉を炒めたおかず。
右手でウガリをひと口大にちぎって丸め、おかずを一緒につまんで食べる。


ところでこのインゲンマメ、ベナの人びとは一風変わった方法で栽培しています。タンザニアの農村では、潅漑や水やりの習慣が発達してこなかったところが大半なので、ふつうは雨季のあいだに作物が栽培されます。ベナの農村でも主食用のトウモロコシは、なだらかにひろがる丘陵の斜面で、雨季のあいだに栽培されます。それに対してインゲンマメは、谷底の河川沿いに発達した湿地で、乾季のあいだに土のなかの水分を利用して栽培されるのです。ベナ語でフィユングと呼ばれるこの谷底の畑では、6月に乾季がはじまると作付け準備が開始され、8月から10月にかけてインゲンマメが播かれて、雨が本格的に降りはじめる12月から翌年2月にかけて収穫がおこなわれます。

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幅の広い大きな畝でうめつくされたフィユング。
谷底の湿地につくられるフィユングでは、乾期でも土に多くの水分が含まれているため、
畝のまわりに排水溝をめぐらせて余分な水を除いています。


年末年始は特に、蔓の伸びない矮性(直立性)品種の収穫が最盛期をむかえるので、ベナの人びとは毎日畑に通い、実ったマメを朝から晩まで収穫、収穫。フィユングで栽培されるインゲンマメのうち、蔓性の品種は蔓が伸びるに従って順次花が咲いていくので、収穫が少しずつ長期にわたるのに対して、矮性の品種は茎がある程度まで伸びると一斉に花が咲くので、収穫が一時期に集中してしまうのです。収穫のタイミングが遅れでもしたら大変。実ったマメが雨に濡れて、色がわるくなったり、ときには鞘にはいったまま発芽したりしてしまいます。そうするとマメの味が悪くなったり、商品としての価値が落ちたりするので、収穫作業は他のどんな仕事よりも優先的におこなわれます。

でもせっかくのこの時期、畑で過ごしてばっかりというわけではありません。クリスマス・イブと大晦日の晩には教会で、特別に夜間ミサが催されます。「インゲンマメの収穫が忙しくてそれどころじゃないよ」と言いながら、ご婦人方や子どもたちはミサをとても楽しみにしています。その日は畑から帰るとすぐに身体を洗い、新しくあつらえた服や布で着飾って教会へ。ミサではロウソクをともして聖歌をうたったり、子どもたちが聖書にちなんだ劇を披露したりと、厳かななかにも楽しい雰囲気が満ちています。ミサが終わって、街灯のない真っ暗な闇のなか、星空を見上げながら月明かりやロウソクを頼りに家路をたどるのもまた楽しいことです。帰宅後は翌日の収穫作業に備えて早ばやと眠ってしまうとはいえ、忙しい収穫期に催されるこのミサは、実は畑作業の疲れを癒すささやかな喜びなのかもしれません。

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村の仕立屋さん。クリスマス前になると、聖歌隊がお揃いのユニフォームを
あつらえたり、村びとが服を新調したりするので大忙し。右の壁に貼ってある
ポスターを見ながら、お客さんとデザインを相談します。

更新日: 2006-01-10, 作成者: AFRIC Africa