アフリカ便り— アフリカの未来世代

将来の良きお母さん候補たち (タンザニア)

藤本 麻里子

小さな女の子が夢中になる遊びといえば、世界中どこでもやっぱりままごと遊びでしょう。タンザニアのインド洋島嶼地域ザンジバルの漁村で、両親と2人の兄と暮らしている5歳のサーダはとてもおしゃまで活発な女の子。近所の子供たちを従えて、いつも元気に裸足で跳び回っています。男の子たちと追いかけっこをしたり木登りをしたりすることもありますが、女の子たちだけで遊ぶときはいつもままごと遊びに熱中しています。

日本では様々な種類のままごと道具が売られていて、最近ではシステムキッチンさながらの本格的なオモチャも登場しています。それら本格的な日本のオモチャでは、フライパンで食材を炒める動作をすれば、その音や匂いまで再現されるというハイテクぶり。

でも、ザンジバルの漁村でサーダが使うのは決してオモチャのままごとセットではありません。お母さんが実際に調理で使うナイフをこっそり失敬しては、庭になっている木の実やオレンジをとってきて皮をむいたり小さく刻んだりしてお料理ごっこをしています。お母さんがナイフを使おうといつも置いている場所を探しますが、ナイフはどこにもありません。

「サーダ、サーダ!ナイフ持ってきなさい。どこにやったの!」
「今持って行くー!」

そんなやりとりがしょっちゅう聞こえてきます。5歳の女の子が本物のナイフを持ち歩くなんて、日本では安全性の観点から絶対にあってはならないと考えられるかもしれません。サーダのお母さんもサーダが危ないナイフの使い方、持ち方をしていれば注意しますし、もっと小さな女の子には絶対に触らせないように気を付けます。でも、5歳ともなればある程度の分別はつきますから、ちょっとナイフを手に取ったくらいでは叱りません。そうやって女の子たちはナイフの使い方、調理の技術を学んでいくのです。

ままごと遊びには食器も欠かせません。家で使っていた紅茶を飲むためのカップにひびが入って使えなくなると、それはすぐにサーダのままごと道具になります。そうやって各家庭から出た不要な食器を持ち寄っては、女の子たちはままごと遊びに興じます。砂で作ったケーキにビスケット、ひびの入ったマグカップには土で色をつけたチャイが注がれます。おもてなしをする側とされる側を交代しつつ、砂のケーキを食べる真似をしながら、ままごと遊びに興じます。

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ままごと遊びに夢中な女の子たち

彼女たちのおままごと遊びのモデルはいつもお母さん。お母さんが料理する様子を日頃から間近で見ているので、自分でもやってみたくて仕方がないのです。でも、まだお手伝いまでは出来ない。そこで彼女たちは、ままごと遊びですっかりお母さんになりきっています。彼女たちのままごと遊びは調理・炊事ごっこにとどまりません。丸太の切れ端を大事そうに抱えて歩いていたかと思うと、水を張った鍋の中にその丸太を立たせて丁寧に水をかけて洗い始めました。そう、まだ幼いサーダが丸太を赤ちゃんに見立てて、赤ちゃんをお湯浴びさせているのです。タンザニアのお母さんたちは、プラスチックの桶にお湯を張って赤ちゃんを立たせ、やさしくお湯を体にかけて洗ってあげます。少子化が著しい日本とは違い、タンザニアの村落ではあちこちに新生児や1,2歳の赤ん坊を抱えた女性達がいて、子供たちはお母さんが赤ちゃんの世話をする様子をしょっちゅう観察するチャンスがあります。お母さんがやることは何でもやってみたい。そんなサーダは、赤ちゃんのお湯浴びごっこもままごと遊びに取り入れているのです。ままごと遊びに熱中する女の子たちは、きっと将来良きお母さんになることでしょう。

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丸太を赤ちゃんに見立ててお湯浴びごっこ

更新日: 2017-1-21, 作成者: AFRIC Africa