「私たちに何ができるか」

西 真如

数名の人間が一緒になって何かをはじめようというとき、昨日まで自分が生きてきた世の中に何かを付け加えたいという思いが、そこにはあるのだと思う。付け加えられたその何かは、それまでの世界を、ほんの少し違ったものにするだろう。

私は昨年、エチオピアのHIV感染者からの聞き取り調査を始めた。そしてある小さな町で、感染者の生活向上を目指す活動をしている女性に出会った。彼女自身もHIV感染者である。私は彼女たちが拠点にしている小さな事務所で、感染者が必要としているケアのことや、そのために県の保健局から得られる支援についての話を聞いた。最近はエチオピアの小さな町や村でも、HIV治療薬が手に入る。そして感染者は、適切な治療さえ受けていれば健康を保つことができる。それでも感染の事実を知った住民の中には、取り乱して彼女の事務所に駆け込んでくる人もいる。そういった人たちと話をしながら、自分自身が落ち込んでしまわないようにするのは、けっこう大変なことなのだと彼女は語った。

それから私たちは町にでかけて、彼女らが感染者の所得創出のために運営している、小さな雑貨屋を見せてもらった。こうした活動に熱心に取り組むことで、彼女は周囲の期待に応えてきた。ただ気になったのは、彼女の話しぶりから、いまの活動が感染者の生活を良くするという確信を、彼女自身が持てないでいるように見えたことだ。