『国家支配と民衆の力-エチオピアにおける国家・NGO・草の根社会―』宮脇幸生=編

紹介:眞城百華

本書は、エチオピアにおけるNGOや草の社会の変革を求める動きに注目した論集である。アフリカといえば援助や支援を受ける対象と捉えられがちであるが、本書が描き出しているのはNGOや草の根の組織をエチオピアの人々が結成し、ローカルなネットワークや紐帯に基づいて自分たちの住む地域やコミュニティを変革しようとする動きである。エチオピアではこれらの動きは1990年ごろから顕著になっている。私もエチオピアの自分の調査地で、社会的弱者とみなされる女性たちが組織するNGOの成立と展開を調査した。多くのインフォーマントの女性たちから、「私たちはアフリカの外からやってくる援助を座って待っているだけではない。確かに資金援助で頼ることがあるが、自分たちが直面する問題をどう解決すべきかNGOを中心に検討して、解決するために活発に活動をしているからこの活動をぜひ伝えてほしい」というメッセージを各地で受け取った。私が調査するNGOにはエチオピア人以外の正規スタッフはおらず、すべてエチオピア人の女性たちによってNGOの運営が決定され、女性の生活や地位の改善に寄与している。

日本では盛んに、支援の対象としてアフリカの人々が取り上げられ、「支援される存在」としてのアフリカばかりが取り上げられる。現時点ではアフリカには外部資金としての援助が全く不要とは言いきれない。しかし、アフリカではすでに自分たちで自分たちの村やコミュニティ、出身地を改善しようと活発に活動している人々の存在にもっと注目が集まってもよいだろう。

他方で、エチオピア人によるNGOの活動は必ずしも順調ではない。外部資金を資金源の一つとするNGOの活動に対する国家の監視や規制もある。本書の1章、2章では政府によるNGO規制の動きを取り上げている。またエチオピアにおけるNGOの活動も決して一様ではない。3章、4章、5章では多様な地域、目的、組織形態のローカルNGOの活動が紹介されており、ローカルNGOの多様性、またそれぞれの活動の抱える課題も分析されている。ローカルNGOの活動を開発の文脈だけで取り上げるのではなく、社会変革としてとらえなおす視点の重要性も見えてくる。またNGOは出身国においてだけでなく、難民が流出先の国でも結成しており、6章は南スーダン難民のウガンダにおける活動が紹介されている。本書では、さらに多様なエチオピアにおけるNGOをめぐる状況を取り上げる5つのコラムも掲載されている。

エチオピアにおけるNGOや草の根社会の動きを取り上げる本書は、エチオピアにおける社会変革に向けた試みを多様な角度から分析している。アフリカの社会に関心がある方にも、開発や援助に関心があるかたにもぜひ一読していただきたい。

目次

はじめに
序章   国家・市民社会・NGO -エチオピアからの視点-  (宮脇 幸生・利根川 佳子)
第1章  「慈善団体および市民団体に関する布告」(No.621/2009)の影響についての検討 (児玉 由佳)
第2章  エチオピアにおけるNGOの活動領域の検討 -市民社会に関する法律の影響とNGOの対応と認識- (利根川 佳子)
第3章  内戦支援からNGOへ -ティグライ女性協会の活動を中心に- (★眞城 百華)
コラム1 政府系・非政府組織とは? -食糧援助体制のなかのNGO- (松村 圭一郎)
コラム2 住民参加型開発プロジェクトの行方 (吉田 早悠里)
第4章  エイズと聖水 -HIVの治療活動に携わるNGOの活動- (佐藤 美穂)
コラム3 「NGOランド」に展開されるプロジェクト (田川 玄)
コラム4 NGOの活動地域にみられる中心・周辺構造 (藤本 武)
第5章  女性のエンパワーメントと地域社会組織の展開 -農牧民ホールにおける女性組合の事例から- (宮脇 幸生)
コラム5 ローカルNGOによる平和構築活動の成果と挫折 (佐川 徹)
第6章  難民の市民社会組織にみるローカルな生存戦略 -ウガンダの南スーダン難民の事例- (村橋 勲)
索引
執筆者紹介

アフリック会員に★印を付した。

書誌情報

単行本: 276ページ
定価:本体2,200円+税
出版社: 大阪公立大学共同出版会 (2018/3/20)
ISBN-10: 4907209835
ISBN-13: 978-4907209834
出版社のサイトhttp://www.showado-kyoto.jp/book/b341756.html

更新日: 2019-02-25, 作成者: AFRIC Africa