映画『ベンダ・ビリリ!〜もう一つのキンシャサの奇跡』

おすすめ:黒崎龍悟

この映画は,コンゴ民主共和国の首都キンシャサの路上を舞台とする。障がいをもつ人々とストリート・チルドレンが一緒になって音楽活動を展開する姿にフォーカスを当て,彼らが音楽で成功を収めるまでのプロセスを描いている。

紹介者は,アフリカでも特に平和といわれるタンザニア,そのなかでものどかな農村で調査をしてきた。この映画の舞台は,それとはまったく対照的な世界である。政情が安定しない国の首都,さらには障がいのハンディキャップを負いながら,人々はどのように生活しているのか,またタイトルにあるように,どのように「奇跡」が現実のものとなっていったのかを知りたくなったのがこの映画を見た動機だ。

予想通り,冒頭からキンシャサでの苛烈な生活が語られていく。しかし,深刻な雰囲気はリンガラ音楽を歌う人々の姿でいつの間にか後景に退いていく。登場人物の多くが足に障がいをもっていて,手でペダルを回す車いすを使っているのだが,そうした車いすで隊列をなし,子どもとともに陽気に歌いながら町中を通り抜ける姿が印象的だ。

もちろん成功するまでには苦難もあった。ストーリーとしてはそれを乗り越えて,音楽を頼りに,あきらめずにチャンスを追うことで「奇跡」を現実のものとしていくということなのだが,見どころは,そこに切羽詰った感じや深刻さがほとんどないことにあると思う。人々は持ち前の陽気さで成功の象徴であるヨーロッパ・ツアーに淡々と近づいていくのである。

成功してトンカラ(ダンボール)ではなくマットレスで寝るようになった今でも,彼らはきっと,路上で陽気に歌っているのだろう。

※「ベンダ・ビリリ」とは,リンガラ語で「外面を引き剥がせ(=内面を見ろ)」を意味する(松浦直毅会員による訳)。

更新日: 2013-09-01, 作成者: AFRIC Africa