『グローバル社会を歩く―かかわりの人間文化学』赤嶺 淳 (編)

紹介:岩井 雪乃

本書は、わたしを含めた6人の著者で執筆しました。 本書への寄稿を依頼された時、編者の赤嶺さんから言われたのは、「『わたし』という一人称を主語に書いてください」でした。

研究者として論文を書く時は「客観性」が求められるため、基本的に「わたし」は登場しません。しかし、実際のフィールドワークの現場では、フィールドワーカーは空気のような透明人間になることは不可能です。そこに存在する一人の人間として調査地の人びととかかわることになります。それは、現地の人びとに影響を与えることであり、同時に自分自身の思想や行動にも影響を与えられます。 そんな「自分の経験」を活字にしてもらう機会は、ありそうでなかなかありません。この機会を逃したらもう書けないかも!という気持ちで、これまでのフィールドの人びととのかかわりからの自分の変化を綴りました。

わたしは、日本人として標準的な「絶滅の危機にあるアフリカの貴重な動物を守らなければ」と思っていたのが、村びとと生活をともにし、彼らの視点を獲得していく過程で変化していきました。村びとの視点から見た動物保護区は「動物と先進国の観光客のために地域住民の権利を奪う存在」だったのです。

わたしを含めて、この本の筆者たちは、矛盾を抱えたフィールドにかかわりながら、自分にできることは何かと模索を続けています。そんな泥くさくもがく姿から、フィールドワークの新しい可能性を見出していただきたいです。

ケニアで牧畜民を研究する湖中真哉氏からは「『グローバルな綺麗事』に終始しがちな学問を、現実に投げ入れる──若手フィールドワーカーの愚直なまでのリアリズムが魅力的」(図書新聞 第3111号 2013年05月25日)と評していただきました。

目次
I 人間と環境
第1章 ともにかかわる地域おこしと資源管理:能登なまこ供養祭に託す夢…………赤嶺 淳
第2章 自然の脅威と生きる構え:アフリカゾウと「共存」する村…………岩井雪乃

II ことばと社会
第3章 言語を「文化遺産」として保護するということ…………佐野直子
第4章 フィールドワーカーと少数言語:アフリカと世界の手話話者とともに…………亀井伸孝

III 調査と現場
第5章 「自主避難」のエスノグラフィ:東ティモールの独立紛争と福島原発事故をめぐる移動と定住の人類学…………辰巳頼子・辰巳慎太郎
第6章 海外研究・異文化研究における調査方法論:社会調査の前提をとらえなおす…………浜本篤史

出版社:新泉社
定価:2625円
発行:2013年3月
368頁

更新日: 2013-07-03, 作成者: AFRIC Africa