『アフリカンキッチン』アフリカ理解プロジェクト

紹介:村尾 るみこ

『アフリカンキッチン』には、アフリカ各地の料理に関するレシピ、料理具や食材に関する情報が、豊富な写真とともに掲載されている。練る、搗く、といったアフリカならではの調理の仕方も、詳しく紹介してある。レシピだけに偏りがちな外国のアフリカ料理本とは異なり、楽しみ深いのが特徴だ。

 

この本を読みすすめるに従い、様々な思い出がよみがえった。アフリカ各地での滞在の思い出である。これまでに、私は様々な機会を通じて、アフリカの国のうち、9か国を訪問した。はじめの滞在先は、調査研究のために一番長く滞在したザンビアである。「フィールドワークでは、毎日現地の人と同じものを食べて、現地社会になじまなければならない。」そう考えていた私であったが、滞在したザンビアの農村は、アフリカの多様な食文化に触れているとは言い難い場所であった。そこでは毎日キャッサバの練粥とハイビスカスの葉という組み合わせで食事をとることが多く、「本で読んでいた豊かなアフリカの食文化って、一体どこにあるのだろう」と思っていた。

その後、様々な国の様々な食を味わう度ごとに、自分の調査地の食生活の厳しさを思い知り、ほかの調査地にすればどんなに良かったか、とすら考えることもあった。しかし、いろいろな食を味わい、考えるうちに、逆に調査地の食の『豊かさ』について、身をもって知ることになった。キャッサバの練粥一つを取り上げても、家庭や店によって味が違う。その理由をみていくと、品種や細かな料理法、物質文化、歴史の違いを見ることができた。たとえば、スイートキャッサバでつくる練粥とビターキャッサバでつくる練粥の味やにおいは違うし、キャッサバを練り上げるために準備するお湯の温度にも違いをみることができる。品種や温度の違いに気づき、それがどこからきたのかを尋ね歩くとき、私の心は踊り、疲れを忘れることもしばしばであった。

特に日本のように、アフリカから遠い場所でアフリカの食の楽しさを伝えることは、それを味わい楽しんだ人の数が少ない分、本当に難しいように思う。それでも、様々な理由と関連しあう「食」から、魅力のアフリカを伝えていきたい。『アフリカンキッチン』は、アフリカの食に現地で触れた人びとの、そんな想いがにじみ出る本だろう。

更新日: 2013-06-13, 作成者: AFRIC Africa