『タンザニア南部高地における在来農業の創造的展開と互助労働システム
― 谷地耕作と造林焼畑をめぐって』 著:近藤 史

タンザニア南部高地、キファニャ村に暮らす農耕民ベナは、近年の市場経済化の動きを巧みに捉えながら、新たな農法を創出し、社会構造に改変を加えながら、経済的な自立と環境の循環的な利用を実現した。この本では、こうした在来農業の独創的な変容プロセスを、農業生態と住民の互助労働システムを視野に入れて緻密に分析し、アフリカ農村における環境利用の持続可能性と農業集約化の方向性について論じている。

著者ははじめに、農学の理論と方法論を援用しつつ、谷地における農業生産様式の改変について検討する。ベナの人々が土地不足や市場経済化の進展をうけて、未利用だった冠水地に排水溝を設けて耕地化し、また伝統/近代の二項対立的な技術観を超越して従来の農法に深耕と化学肥料の使用を取り入れた集約的な農法を創出するダイナミズムを解明する。

続いて、伝統的な焼畑に注目し、ベナが外来の樹種モリシマ・アカシアと育林技術を取り入れて、人工林を循環的に利用する労働集約的な技術革新をおこなってきたことを明らかにする。そこから、森林利用の矛先を天然林から人工林に転嫁するという、アフリカの生態や生業様式に根ざした環境保全型農業のひとつの方向性を提示する。

一連の在来農業の集約化のプロセスはまた、新たな農法を受け入れる社会システムが創発され、それが地域社会に浸透していくプロセスでもあった。著者は最後に、在来の互助労働組織が、知識や経験の累積媒体となり、またそれに基づく新たな試みの実践母体ともなって地域の創造性を高めて、内発的発展に結びついていることを明らかにする。

出版社:松香堂書店
定価:2,000円+税
発行:2011年 6月
B5変形判/124頁
ISBN978-4-87974-637-5 C3039

更新日: 2012-03-31, 作成者: AFRIC Africa