『チンパンジーとさかなどろぼう―タンザニアのおはなし』 ジョン・キラカ作 若林ひとみ訳

紹介:八塚春名

 

絵がかわいくて手にとった。きっとこの絵本を手にした多くの人たちのきっかけは、これではないでしょうか。私もそのひとりです。

お話は、ソクベという名前のチンパンジー漁師のさかなを、イヌが狙うというところから始まります。日本の絵本であれば、「さかなどろぼう」の役には誰もが迷わずネコを選ぶのでしょうが、作者はタンザニア人。たしかに私も、タンザニアでイヌが魚を狙う場面を見たような・・・。この絵本には、「アフリカっぽいなぁ」と顔がほころぶ要素が散りばめられています。

たとえば、動物たちが村でサッカーをしているところ、ソクベの子どもが強く蹴ったボールが、木を組み立てて作ったゴールにあたって、ゴールが壊れてしまいます。すると動物たちはゴール用の新しい棒を探しにでかけます。「ゴールの棒を探しにでかける」といったような、アフリカではありふれた、でも日本ではまず見かけない、そんな場面が満載です。アフリカに行ったことがある人には、こんな細かな点に共感しながら読み進めるのがオススメです。

またこの絵本には、チンパンジーとイヌだけではなく、たくさんの動物が出てきます。そして、そのたくさんの動物たちが、東アフリカの女性が腰に巻くカンガ布を巻いています (ただし、主役のチンパンジーとイヌは巻いていませんが・・・)。シマウマの母さんは、アフリカの女性たちがそうするように、子シマウマをカンガ布を使って背中におぶっています。首の長いキリンも同じように、腰にカンガ布を巻いています。お話だけではなく、こうして絵を存分に楽しむことができる本です。

お話の最後に、「さかなどろぼう」の犬は裁判にかけられて罰を科せられるのですが、その罰も、なんともアフリカらしい。人に迷惑をかけたぶん、共同労働で人の2倍働いてお返しをする。なんだかほっこりする、そんな終わり方です。

更新日: 2012-02-12, 作成者: AFRIC Africa