『アフリカ学入門:ポップカルチャーから政治経済まで』舩田クラーセンさやか=編

紹介:大門 碧

 

表紙は、明るい黄色い地をバックに、アフリカでよく見る乗り合いバスの客たちのイラスト。毛糸の帽子をかぶる男性、イスラム教の服装をする女性、眼鏡をかけたオジサン、ワンピースを着て金色ピアスのオネエサン。この絵の中にも、すでにいくつか私たちの描く「アフリカ」を裏切るものが入っているかもしれない。この本は、明るくそして真剣に私たちのアフリカへのイメージをほぐしてくれる1冊だ。

本書の目的は、「アフリカに興味を持った人に『はじめの一歩』を提供し、『次の多様な一歩』を踏み出すためのガイドブック的な役割」(p.5)を果たすこととある。かなり専門的な内容が書かれているが、章ごとに、その章の目的が平易な言葉で説明され、章末には章の内容に関係する文献がレベル別にあげられていたり、DVDへの言及も見られる。さらに本書の後半部分では、具体的に日本でアフリカとどうやったら関われるかの手掛かり(アフリカを学べる大学特集など)が載っていたり、アフリカでさまざまな取り組みをおこなう日本人たち(国連職員、NGO職員、企業人など)の語りが紹介され、アフリカへの「自分の一歩」を妄想し始める人も少なくないだろう。しかし、この本の魅力は、前半から中盤にかけての多分野にわたるアフリカに関する説明の中で、日本の私たちが考えているアフリカの捉え方を崩してくれる点であろう。

たとえば、アフリカへの援助をイメージする際になかなか考えが及ばないような、援助国側の責任、さらに具体的にはアフリカの食料危機を考える上で食料の増産以外に考えるべき問題。また、日本人たちが明治時代からアフリカを舞台にした欧米の冒険小説を翻訳していたこと、大正時代にはアフリカへの日本商品の市場拡大を狙って日本人たちが悪戦苦闘していたことなどは、日本とアフリカの関係をあらためて考えさせられる。そして、すべての文章のはしばしから感じられるのは、アフリカの人びと自身の活動への注目する姿勢である。ケニアのハランベー学校づくり(コミュニティ・スクール)、ガンビアでの蚊帳の普及活動など、アフリカの人びとの姿をきちんと見ることは、「アフリカ学入門」の根幹であると感じざるをえない。

日本で暮らしてきたわたしたちにとって、アフリカに関わるとき、自分たちがもともと持っている価値観をとりこわすことから始めなくてはいけない。これは、案外、むずかしい。アフリカに行くこと自体は、それほど困難ではなくなったこの時代、物見遊山でアフリカに行ってしまったら、アフリカの人びとの見せる困難さや豊かさに圧倒される。自分が持っているアフリカへのイメージを相手に押し付けて勝手に納得してしまうか、そのイメージに合わないものが出てきたら、目をそむけてしまうかもしれない。せっかく現地に行っても、生ものであるアフリカをきちんと見ることができないのだ。本書は、自分のもつアフリカへの考えを一度解体し、アフリカと対峙するための重要な地盤をつくってくれるだろう。まさしく「ここから始めるアフリカ」としての一冊としておすすめしたい。もちろんすでにアフリカにかかわり始めてしまった人にも頼もしい一冊だ。多分野(歴史・援助・紛争・教育・音楽など)にわたる記述の中に、必ず新しい発見はあるだろう。

出版社:明石書店
発行:2010年

更新日: 20011-02-05, 作成者: AFRIC Africa