『結婚と死をめぐる女の民族誌—ケニア・ルオ社会の寡婦が男を選ぶとき 』
著:椎野若菜

ここ最近、日本ではいやおうなく事実として現れてきた少子高齢化、晩婚化、といった社会的事象を背景に、ひとりで生きていくにはどうしたらいいのか?という議論があらゆる方面でなされている。これまでのステレオタイプだった家族像から外れた生き方や人間関係をめぐる「不安」が、より顕在化してきたともいえる。しかし離婚したら、また配偶者を亡くしたあと、どう生きていけばいいのか、ひとりで年をとってしまったらどうしよう−−こういう不安は前からあったはず。他社会ではどうなのだろうか。

 

本書では、東アフリカ、ルオ社会の事例をもって、とりわけ女性が人生の最も大きなイベントである結婚や、年の差ゆえに多くの女性が経験する夫の死、そしてその後をどう暮らしているのかを、多くの具体的事例からみていく。

 

アフリカ社会は、植民地政策によって大きく強制的に変えられた。かつての結婚の方法はどのようであったのかは、植民地時代の公文書を用いつつ、また独立した60年代前後については、具体的な聞き取りより、そしていまの事情はフィールドワークからおい、その変化を知ることができる。

 

対象としているケニア・ルオ社会には、性をめぐる複雑でユニークな慣習や信念、社会がつくりだした結婚をはじめとする「制度」が存在するが、なかでも夫を亡くした妻がを亡夫の兄弟に引き継がれる慣習的制度、「テール」関係に注目していく。夫を亡くした妻たちは自分自身の立場をふまえながら、「テール」のような伝統的な制度や慣習をいかにたくみに戦術として使い、男性たちと関係を築き生きているのか。ルオ社会のセクシュアリティと男女の関係性について、両者のドラスティックなかけひきのありかたをつうじ女性の生き方、ライフサイクルを考えたい。

<目次構成>
第1部 序(夫亡きあとの社会制度;ルオ社会)
第2部 ジェンダー、セクシュアリティと結婚(ルオ人のライフサイクルと生活居住空間;結婚の方法とその変化;結婚におけるセクシュアリティとジェンダー;慣習的規範と性—ドゥオンとチラ)
第3部 代理夫を選択する—テール関係とは(人が死んでしまったとき;テール関係を結ぶ)
第4部 伝統的慣習の利用(寡婦をめぐる多面的なテール関係;男によるテール関係の利用;ライフサイクルにおける結婚とテール関係;町に出た寡婦たち)

単行本: 400ページ
出版社: 世界思想社 (2008/04)
ISBN-10: 4790713237
ISBN-13: 978-4790713234
発行: 2008/04
価格 5,040円

更新日: 2010-03-07, 作成者: AFRIC Africa